株式会社が登記上の本店住所から本店を移転させる場合には、会社法上の所定の手続きを行った上で、住所変更(本店移転)の登記を申請しなければなりません。
株式会社の本店移転は、その登記上の本店をどこに移転するかによって手続きが若干異なってくるため注意が必要です。
ここでは、株式会社の本店移転について、手続きの流れなどを解説していきます。
1.「本店」と「本社」の違い
会社の本店移転とは、その言葉のとおり会社の本店を移転することですが、「本店」は必ずしも会社の「本社」と同一とは限りません。
「本店」とは、会社の登記記録(登記簿謄本)上、本店として登記されている住所のことをいいます。
株式会社を設立する際には必ずこの「本店」を定めた上で、本店住所を管轄する法務局に設立登記を申請することになります。
一方、「本社」は「本店」と同様の意味合いで使われることもありますが、法律上の用語ではありません。
「本社」は一般的に株式会社の中枢機能(本社機能)を置いている場所を指すことが多く、必ずしも「本店」の住所と一致している必要はありません。
創業時の住所に「本店」を置いたまま会社の「本社」だけ他の場所に移転するということもあります。
ただし、本店の住所に会社の実態がないというのは許されないため、全く会社機能が存在しない場所に会社の本店を置いたままにするということはできません。
また、株式会社の本店は一つしか定めることはできませんが、本社を複数置くことについては特に制限はないため、例えば東京本社と大阪本社といったように複数の本社を置いている株式会社も存在します。
2.本店移転の手続き
具体的に株式会社の本店移転の手続きについてみていきましょう。
株式会社の本店移転手続きは、①同一の法務局の管轄区域内での移転であるか否か、②本店移転にあたって株式会社の定款変更手続きが必要か否かによって変わってきます。
2-1.同一法務局の管轄区域内で移転+定款変更不要の場合
株式会社の本店移転先が今の本店住所を管轄する法務局の管内であり、かつ、定款に最小行政区画の住所までしか記載されておらず、定款変更が不要な場合についてです。
最小行政区画とは、都道府県名+市区町村名のことをいい、「○○県○○市」や、「東京都杉並区」などが最小行政区画となります。横浜市や大阪市などにも○○区というのは存在しますが、これらは市区町村の「区」ではないため、最小行政区画はそれぞれ「神奈川県横浜市」、「大阪府大阪市」となります。
同一法務局の管轄区域内での移転で、定款変更が不要の場合とは、例えば、定款に「当会社は、本店を東京都杉並区に置く。」としている株式会社が、同じ杉並区内で本店を移転する場合です。
この場合の本店移転手続きは最もシンプルなものになります。
①取締役の決定(取締役会決議)によって本店移転先の住所と本店移転日を決める
取締役が一人の場合には単独で、複数の場合には頭数の過半数の決定で、取締役会設置会社の場合には取締役会決議によって本店移転先住所と移転日を決めます。
なお、本店移転日は本店が「現実に移転した日」のことです。
ですので、とりあえず新しいオフィスを借りたので、先に本店移転登記だけ済ませたい、ということはできません。
②本店移転日から2週間以内に本店移転登記を申請
本店を「現実に移転した日」から2週間以内に管轄の法務局(本店移転前と同じ)に本店移転の登記を申請します。
本店移転登記には、登記申請書と取締役の決定書(取締役会議事録)を作成し、3万円の登録免許税を納めます。
③登記完了後に各方面へ届出
本店移転登記は申請してから1週間~2週間程で完了しますので、完了後に謄本を取得し、税務署等に届出を行います。
【本店移転登記後の主な届出先】
・税務署
・市区町村(役所・役場)
・都道府県税事務所
・年金事務所
・労働基準監督署及びハローワーク(労働保険に加入している場合)
2-2.同一法務局の管轄区域内で移転+定款変更が必要な場合
株式会社の本店移転先が今の本店住所を管轄する法務局の管内であり、かつ、定款変更が必要な場合についてです。
例えば、定款に「当会社は、本店を東京都杉並区久我山〇丁目〇番〇号に置く。」としている株式会社が、本店を「東京都杉並区荻窪〇丁目〇番〇号」に移転する場合です。
定款に記載する本店所在地は最小行政区画までで構いませんが、まれに住所を全部定款に記載している会社が見受けられます。このような記載も法律上禁止されているわけではありませんが、メリットはあまりないため、おすすめはできません。
また、例えば定款に「当会社は、本店を東京都武蔵野市に置く。」としている株式会社が、本店を東京都三鷹市内に移転する場合、定款変更は必要ですが、管轄の法務局は移転前と移転後で同じ(東京法務局府中支局)であるため、このパターンになります。
①株主総会で定款変更決議
定款の内容を変更するためには、株主総会を招集して定款変更につき承認を受けなければなりません。
会社の本店も定款の記載事項であるため、本店所在地の記載内容を変更するためには株主総会決議が必要です。
②取締役の決定(取締役会決議)によって本店移転先の住所と本店移転日を決める
なお、取締役会を設置していない株式会社においては、本店移転先の住所と本店移転日を株主総会で決定することもできます。
一方、取締役会設置会社の場合には、定款に別段の定めをしていない限り、本店移転先住所と本店移転日は取締役会で決定する必要があります。
③本店移転日から2週間以内に本店移転登記を申請
本店移転前と移転後で管轄の法務局が同じであるため、登記の申請先は1カ所で、登録免許税の額は3万円です。
ただし、登記申請書には、定款変更を決議した株主総会議事録と、株主の氏名又は名称,住所及び議決権数等を証する書面(通称「株主リスト」)を別途添付する必要があります。
④登記完了後に各方面へ届出
2-3.他の法務局の管轄区域内に移転する場合
株式会社の本店移転先が他の法務局の管轄区域内である場合についてです。
例えば、東京都千代田区に本店を置いている株式会社が、本店を東京都港区に移転する場合です。
なお、法務局の管轄をまたぐ本店移転の場合には、必ず最小行政区画の変更を伴うものになるため、定款変更は必須となります。
①株主総会で定款変更決議
②取締役の決定(取締役会決議)によって本店移転先の住所と本店移転日を決める
取締役会を設置していない株式会社及び定款に別段の定めをしている取締役会設置会社の場合には、本店移転先の住所と本店移転日を株主総会で決定することもできます。
③本店移転日から2週間以内に本店移転登記を申請
他の法務局の管轄区域内に本店を移転する場合には、本店移転登記は今の本店住所の管轄法務局と移転後の本店住所の管轄法務局の2カ所に申請することになります。
もっとも、移転後の本店住所の管轄法務局に申請する分については、今の本店住所の管轄法務局にまとめて提出をします(経由同時申請)。
登録免許税はそれぞれの管轄法務局に3万円ずつ納めるため、計6万円となります。
また、移転後の本店住所の管轄法務局に対して新たに会社実印(代表印)を届け出なければならず(印鑑は同じもので構いません。)、今までの印鑑カードは使えなくなるため、登記完了後に印鑑カードの再交付の手続きも必要です。
④登記完了後に各方面へ届出
管轄をまたぐ本店移転登記は、2カ所の法務局で審査がされるため、同一法務局の管轄区域内での本店移転登記と比べて登記の完了に時間がかかります(時期によっては3週間程度かかることも)。
3.株式会社の住所変更(本店移転)の手続きは司法書士まで
株式会社の住所変更(本店移転)は、個人が引っ越しをする場合のように役所に届け出て終わりというわけにはいきません。
期限内に登記を申請しないと過料に処されることもあるため、本店移転の手続きは法令に基づいて速やかに行う必要があります。
会社の本店を移転したけど登記手続きをやっていない、会社の本店を移転したいけれど手続きの流れが分からないという方は、司法書士までご相談ください。
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